官能評価/生理応答計測香気分析

グミを咀嚼中の風味変化を

TDS法でリアルタイム評価

香気分析データとの関連を見える化

食品を食べた際に口腔内から鼻腔に抜ける香りであるレトロネーザルアロマは、美味しさや嗜好性に影響を与える事が知られています。そのため、食品や香料の開発においてレトロネーザルアロマの経時的なリリースを捉えることは重要です。とくに、官能評価と香気分析結果の関係を客観的に把握できれば、製品開発の手掛かりとなることから、近年注目を集める時間経過に伴う複数の官能特性を同時に評価が可能な官能評価手法Temporal Dominance of Sensations法 (以下TDS) に着目し、グミ咀嚼中のレトロネーザルアロマに含まれる香気成分のリリースを機器分析で測定した結果と比較検証を行いました。

この研究成果は2017年3月20日に開催された日本農芸化学会2017年度大会(会場:京都女子大学/京都)で発表しました。

同一のグレープ香料を同じ添加量で添加した硬さ違いのグミ(柔らかい、中程度、硬い)を用い香りに焦点をあてた5用語(フルーティー、フローラル、グリーン、フォクシー、ゼラチン臭)でTDSによる評価を実施しました。その結果、柔らかいグミは、前半にフルーティー(ethyl propanoate、ethyl butanoate様)、中盤にフォクシー(methyl anthranilate様)が有意に強く感じられました。硬いグミは前半にゼラチン臭、中盤にフルーティー、後半にフォクシーが有意に強く感じられました(図1.)。

機器分析は、咀嚼中の鼻からのレトロネーザルアロマを30秒間毎に吸着剤Te n a x™ TAチューブ)に捕集し、GC/MSに供することでグミ中の各種香気成分のエリア値を得ました。

図1.グレープ風味の柔らかいグミと硬いグミのTDS法による風味変化の測定
図2. グミ咀嚼中のレトロネーザルアロマの香気分析方法

TDSで有意に選択された用語「フルーティー」と「フォクシー」に着目し、TDSの評価用語の選択時間(duration time)の30秒間毎の合計値と、各用語特性に対応する香気成分「ethyl propanoate、ethyl butanoate(フルーティー様)」と「methyl anthranilate(フォクシー様)」の30秒間毎のGC/MSエリア値を比較したところ、官能評価データと機器分析データそれぞれの値の増減の挙動に同様の傾向が伺えました(図3)。

図3. TDS官能評価データ(フォクシー)と機器分析データ(methyl anthranilate)の比較

今回の結果から、評価用語に香り以外の特性を含めず、TDSのボタン選択時間の合計値と香気分析結果を一定時間毎に分割して解析することで、その関連を比較でき、TDSと機器分析による評価は、食品や香料の開発・改良の手掛かりとなりうることが示唆されました。

【発表学会】 日本農芸化学会2017年度大会(京都)2017年
【発表タイトル】 Temporal Dominance of Sensations (TDS) 法と機器分析を用いたグミ咀嚼中のレトロネーザルアロマリリースの評価
【発表者】 大森雄一郎、藤木文乃、明賀博樹、小林恵美、前田知子、中村哲也、斉藤司
総合研究所