トップメッセージ

長谷川香料グループが考えるサステナビリティ

 世界的な気候変動や自然災害により、貧困、食料不足、格差拡大など、様々な社会的課題が深刻化しています。また、国内における少子高齢化や生活者のニーズの変化などは、香料業界にも大きな影響を及ぼします。具体的には、気候変動による異常気象や生物多様性の喪失は、動植物由来の天然原料の収量や品質に大きな影響を及ぼすだけでなく、気温上昇による顧客ニーズや消費者動向の変化なども想定されます。

 当社グループは創業以来、「技術立社」の社是のもと、研究・技術開発力の一層の向上により、特長のある差別化された製品開発に注力しています。その中で、枯渇する食品原料を代替する香料の開発や健康志向への対応を進め、食料不足をはじめとする社会的課題の解決に寄与することを目指しています。

 また、今後の当社グループの成長を追求するためには、経営環境の変化や不測の事態に柔軟に対応できるレジリエントな組織を構築し、少子高齢化に伴う成熟化が進行する国内市場においてシェア拡大に努める一方で、グローバル展開をさらに強化していくことが不可欠です。当社が重点地域と位置付ける米国、並びに中国、東南アジアを中心としたアジア地域に経営資源を効率的に投入し、市場の成長性や消費者の嗜好等を的確に捉え、経営環境の変化に応じた事業戦略を立案、推進してまいります。また、将来にわたる持続的成長の実現に向けた投資を行い、海外市場での業績拡大を目指してまいります。

企業価値の向上と社会的課題の解決に向けて

 当社グループは、「目指す姿」として「香りを通じて豊かな社会づくりに貢献」を掲げています。イノベーションにより新しい価値を創造し、社会が抱える課題を香りの技術を使って解決することで、「目指す姿」の実現に努めるとともに、当社グループの持続的成長と企業価値向上を目指してまいります。

研究
 国内におきましては、営業、研究及びマーケティングを統括するビジネスソリューション本部のもと、戦略的な研究開発を推進するため、重点分野を明確化した上で、既存技術のブラッシュアップ、新規技術の開発等に注力し、当社グループの持続的な成長に貢献する技術開発力の向上を目指してまいります。また、営業、マーケティングとの連携を活かし市場感覚と競争意識を高め、当社独自の特長のある製品の開発により競合他社との差別化を図るとともに、外部の知見を活用した新しい価値の創造、知的資産の共有、融合による技術革新の推進に注力してまいります。さらに、香料事業で培った技術を活かして社会が抱える課題の解決に貢献できるよう努めてまいります。

▶食品(フレーバー)
 食品部門では、安全・安心の確保を第一に、引き続き健康志向に根ざした低糖・低塩・低脂肪の食品においしさをもたらす香料、及び安定性・持続性に優れた香料の開発に取り組みます。また、食資源不足をはじめとする社会的課題の解決に向け、食品原料を代替する香料の開発等に注力いたします。

▶フレグランス
 フレグランス部門では、基礎研究を徹底し、安全性・安定性に優れた新しい香り創りにより、国内でのさらなるシェア拡大に注力いたします。海外におきましても市場調査及び嗜好性調査の結果を踏まえて現地の消費者に好まれる香り創りに努めてまいります。

営業
 研究及びマーケティングと連携し、マーケット調査・分析等の活用により顧客の潜在的欲求の把握に努め、当社の総合力を活かした的確なソリューションを提供することで、顧客に信頼されるパートナーとしての地位確立、カスタマーサクセスへの貢献を通じた売上拡大及び販売シェアアップを目指してまいります。また、新規顧客の探索と開拓を強化し、将来の成長を支える営業基盤の拡充を図ってまいります。

調達
 良質で価格競争力のある材料の安定調達の実現に向け、資源・環境・人権に配慮した調達活動を推進しています。「人権」「労働」「環境」「公正な企業活動」「品質・安全性」「情報セキュリティ」「サプライチェーン」「地域社会」「コーポレート・ガバナンス」等に関するサプライヤーアセスメント等を通じて、サプライヤーとの対話に努めます。

生産・品質管理
 さらなる安全対策を推進し、労働安全衛生に関する体制整備を進めてまいります。また、生産品目の変化に対応するため、工場の再構築、生産設備の統合を図ってまいります。さらに、工場周辺への臭気の拡散防止による地域住民との共生や、長期的な温室効果ガス削減を推進してまいります。また、製造方法改良、物流体制見直し、在庫適正化の取り組みも継続し、製造原価低減に努めてまいります。
 今後も徹底した品質管理と安全性の確保を第一に、代表取締役社長直轄の品質保証部を中心に、研究開発、原材料調達、生産、販売を含めた総合的な品質保証体制のもと、顧客に満足いただける安全・安心な製品の提供に努めます。

海外展開
 経営資源を効率的に投入し、着実なグローバル展開を図る戦略のもと、海外展開を進めています。
 米国では、引き続き現地顧客向けの積極的な営業活動を推進し、米国市場での業績拡大を図ってまいります。また、2023年6月に稼働を開始したカリフォルニア州ランチョ・クカモンガ工場を活用し、米国における生産能力の増強及び生産効率化を図ってまいります。
 中国では、マーケティング機能を活用した戦略的な営業活動により、新規顧客開拓・既存顧客深耕に注力するとともに、利益管理を徹底し、売上、利益の両面から業績拡大を目指してまいります。また、建設を進めていた新研究棟が2023年11月に竣工いたしました。新研究棟の機能を最大限に活用し、研究開発力の強化、業務の効率化を図ってまいります。
 東南アジアでは、同地域全体の営業戦略のもと、マレーシア、タイ、インドネシアの各拠点及び周辺地域の営業員との連携、アプリケーションラボラトリーの活用により営業活動を強化し、業績拡大を目指してまいります。また、今後の業績拡大及び香料需要の増大を見据え、マレーシアにおける新工場建設計画を推進してまいります。

サステナビリティ
 自社の成長を追求するだけでなく、従来以上にステークホルダーを重視した持続可能な社会を実現するための取り組みが求められています。わたしたちが取り組むべきこととして以前から行ってきたCSR活動と、IFRA-IOFIサステナビリティ憲章や、2020年に署名した、国連グローバル・コンパクトへの賛同を踏まえ、社会的課題解決に対する「事業プロセスを通じた貢献」と「製品を通じた貢献」の2つの側面から当社のマテリアリティを検討し、6つのCSR方針(調達、環境、人権労働、品質安全、ガバナンス公正な企業活動、イノベーション)を2020年に定めました。
 2021年には、事業戦略と一体となったサステナビリティの取り組みを組織的に推進することを目的として、サステナビリティ委員会を設置しました。
 2022年3月には、気候変動対応のさらなる推進に向けて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しています。また、天然原料の安定した調達を考慮し、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に基づく開示に向け、生物多様性への取り組みについて2023年度より対応の検討を開始しています。
 また、事業活動による人権への負の影響を予防・軽減するために、対応すべき人権リスクを特定しました。特定したリスクへの対策を行うとともに定期的にモニタリング・情報開示を実施し、取り組みの改善を図っています。

人的資本
 外部環境が日々変化する中、世界が抱える様々な問題を解決していくためには、人種、国籍、性別、宗教、障がいなどにかかわらず、変化に柔軟に対応できる人財を採用・育成し、人的資本を高めていくことが必要です。
 当社グループでは、人財を「資本」と捉え、継続的に改善施策を検討・実行し、人財の価値を最大限引き出し、中長期的な企業価値の向上を目指す、「人的資本経営」を推進しています。
 「従業員の働きやすい環境を整備する」という経営方針に則り、経営戦略と人事戦略を連動させ、「人財が成長し、働く意欲・モチベーションを維持できる活気あふれる企業風土」を目指すとともに、キャリアアップの機会を平等に提供することを定めています。

ステークホルダーとの信頼構築・強化に向けて

 当社グループは、社会の一員として、各ステークホルダーとの信頼関係の構築・強化に努めています。

 一例として、適時適切なディスクロージャー(情報開示)と透明性の保証、株主に対するアカウンタビリティー(説明責任)の確保のため、アナリスト・機関投資家との個別面談の実施や機関投資家向けの決算説明会の開催、情報開示の充実を図るなど、IR活動を強化しています。

おわりに

 企業の持続的な成長と持続可能な社会の実現を考えていく上で、1年後2年後といったすぐ先の未来と同時に、100年後の未来という広い視野での進化も見据えていかなければなりません。香りの世界はまだまだ未知の領域を残していますが、わたしたちには、最新の科学と、100年以上の歴史の中で受け継いできた感性があります。香料のもつ無限の可能性を追求するために、香りのトレンドの分析や新技術の開発、潜在的なニーズを先取りした提案力の強化など、モノづくりのパートナーとして、期待を超える提案を目指します。

 また、地球環境問題の深刻化、市場の成熟化や多様化、高齢化社会、食資源不足など、世界は様々な課題を抱えています。その解決に向け、香りの技術を使ってアプローチすることで、豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えています。

長谷川香料株式会社
代表取締役社長

海野 隆雄