トップメッセージ

代表取締役会長(CEO)
海野 隆雄
代表取締役社長(COO)
長谷川 研治
私は代表取締役会長(CEO)の海野隆雄でございます。
日頃より当社グループの企業活動に多大なるご支援とご協力を賜り、厚く御礼を申しあげます。
当社グループは2024年10月に経営体制の刷新を行いました。代表取締役会長(CEO)に私、海野隆雄が、代表取締役社長(COO)に長谷川研治がそれぞれ選任されました。
今後は私、CEOの海野とCOOの長谷川がお互い手を携え、サステナビリティの各種施策を推進してまいります。
コーポレート・ステートメント
地球環境や世界での動きに目を向けると、気候変動や自然災害により、貧困、食料不足、格差拡大など、様々な社会的課題が深刻化しています。また、国内における少子高齢化や生活者のニーズの変化などは、香料業界にも大きな影響を及ぼします。具体的には、気候変動による異常気象や生物多様性の喪失は、天然原料の収量や品質に大きな影響を及ぼすだけでなく、気温上昇による顧客ニーズや消費者動向の変化なども想定されます。
このような顧客ニーズや消費者動向の変化などを的確に捉え、当社グループは創業以来、食料不足をはじめとする社会が抱える社会的課題の解決に寄与することを目指し、枯渇する食品原料を代替する香料の開発や健康志向への対応などを進めてきました。当社グループでは、「わたしたちは、香りにとどまらず、幅広い技術をもって新たな価値と感動を生み出し、より豊かな生活に貢献する会社を目指します。」というコーポレート・ステートメントを2025年度に制定し、当社グループのありたい姿、目指す方向性を示しています。
これからもこのコーポレート・ステートメントの理念に則り、当社グループ一丸となって持続的に成長していくことで企業価値向上を目指してまいります。
当社グループの持続的成長を実現するためには、経営環境の変化や不測の事態に柔軟に対応できるレジリエントな組織を構築し、少子高齢化に伴う成熟化が進行する国内市場においてシェア拡大に努める一方で、グローバル展開をさらに強化していくことが不可欠です。当社が重点地域と位置付ける米国、並びに中国、東南アジアを中心としたアジア地域に経営資源を効率的に投入し、市場の成長性や消費者の嗜好等を的確に捉え、経営環境の変化に応じた事業戦略を立案、推進してまいります。また、将来にわたる持続的成長の実現に向けた投資を行い、海外市場での業績拡大を目指してまいります。
企業価値の向上と社会的課題の解決に向けて
当社グループは調合香料の拡大、国内市場における収益拡大、海外市場における成長の3つの基本戦略を中心に据え、サステナビリティに関する取り組み、人的資源の充実、事業の選択と集中等を行ってまいります。
研究
国内におきましては、営業、研究及びマーケティングを統括するビジネスソリューション本部のもと、戦略的な研究開発を推進するため、重点分野を明確化した上で、既存技術のブラッシュアップ、新規技術の開発等に注力し、当社グループの持続的な成長に貢献する技術開発力の向上を目指してまいります。また、営業、マーケティングとの連携を活かし市場感覚と競争意識を高め、当社独自の特長のある製品の開発により競合他社との差別化を図るとともに、外部の知見を活用した新しい価値の創造、知的資産の共有、融合による技術革新の推進に注力してまいります。さらに、香料事業で培った技術を活かして社会が抱える課題の解決に貢献できるよう努めてまいります。
食品(フレーバー)
食品部門では、安全・安心の確保を第一に、引き続き健康志向に根ざした低糖・低塩・低脂肪の食品においしさをもたらす香料、及び安定性・持続性に優れた香料の開発に取り組みます。また、食資源不足をはじめとする社会的課題の解決に向け、食品原料を代替する香料の開発等に注力いたします。
フレグランス
フレグランス部門では、基礎研究を徹底し、安全性・安定性に優れた新しい香り創りにより、国内でのさらなるシェア拡大に注力いたします。海外におきましても市場調査及び嗜好性調査の結果を踏まえて現地の消費者に好まれる香り創りに努めてまいります。
営業
営業面におきましては、研究及びマーケティングと連携し、マーケット調査・分析等の活用により顧客の潜在的欲求の把握に努め、当社の総合力を活かした的確なソリューションを提供することで、顧客に信頼されるパートナーとしての地位確立、カスタマーサクセスへの貢献を通じた売上拡大及び販売シェアアップを目指してまいります。また、新規顧客の探索と開拓を強化し、将来の成長を支える営業基盤の拡充を図ってまいります。
調達
良質で価格競争力のある原材料の安定調達の実現に向け、資源・環境・人権に配慮した調達活動を推進しています。「人権」「労働」「環境」「公正な企業活動」「品質・安全性」「情報セキュリティ」「サプライチェーン」「地域社会」「コーポレート・ガバナンス」等に関するサプライヤーアセスメント等を通じて、サプライヤーとの対話に努めます。
生産・品質管理
さらなる安全対策を推進し、労働安全衛生に関する体制整備を進めてまいります。また、工場の再構築、生産設備の統合を図り、将来的な生産増加に対応できるよう生産効率の向上に努めてまいります。さらに、工場周辺への臭気の拡散防止による地域住民との共生や、長期的な温室効果ガス排出量の削減を推進してまいります。また、製造方法改良、物流体制見直し、在庫適正化の取り組みも継続し、製造原価低減や在庫回転率向上による経営資本の効率化に努めてまいります。
今後も徹底した品質管理と安全性の確保を第一に、代表取締役社長直轄の品質保証部を中心に、研究開発、原材料調達、生産、販売を含めた総合的な品質保証体制のもと、顧客に満足いただける安全・安心な製品の提供に努めます。
海外展開
世界全体の香料市場は、年平均3%程度で成長を続けています。当社グループの持続的な成長に向けて、経営資源を効率的に投入し、海外における売上拡大、顧客とのパートナーシップをさらに強化してまいります。
米国では、現地顧客向けの積極的な営業活動を推進し、セイボリー分野、健康分野、飲料分野での売上の拡大を目指してまいります。また、2024年9月に買収したABELEI 社とのシナジー効果による米国中西部への販路拡大や、得意先に高い評価をいただいている日本技術の活用・展開を推進することで、米国市場における業績拡大を図ってまいります。
中国では、キャパシティ増強のための第三の生産拠点新設に向けて製造子会社を設立しました。研究体制と生産体制の強化を推進するとともに、研究との協働やマーケティング機能を活用した営業体制を強化し、未参入分野や潜在需要の開拓による売上拡大を図ってまいります。
東南アジアでは、マレーシアの製造販売拠点とタイ、インドネシアの販売拠点が連携し、売上の拡大を図ってまいります。また、マレーシアのエンステック工業団地に工場用地を取得済みであり、アジア市場・ハラール市場の需要拡大に向けて、生産キャパシティを増やしていきます。さらにアプリケーションラボラトリー活用推進、ライブラリー拡充、フレーバーキット活用による効率化により、顧客対応のスピードアップを図ってまいります。
サステナビリティ
自社の成長を追求するだけでなく、従来以上にステークホルダーを重視した持続可能な社会を実現するための取り組みが求められています。わたしたちが取り組むべきこととして以前から行ってきたCSR活動と、IFRA-IOFIサステナビリティ憲章や、2020年に署名した、国連グローバル・コンパクトへの賛同を踏まえ、社会的課題解決に対する「事業プロセスを通じた貢献」と「製品を通じた貢献」の2つの側面から当社のマテリアリティを検討し、6つのCSR方針(調達、環境、人権労働、品質安全、ガバナンス 公正な企業活動、イノベーション)を2020年に定めました。
この6つのCSR方針のもと、サステナビリティに関する取り組みを推進するため、サステナビリティ委員会を設置し、2022年3月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同、2024年6月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づく開示を、TCFDの提言に基づく情報開示と統合し公開しました。
また、事業活動における人権への負の影響を予防・軽減するために、対応すべき人権リスクを特定しています。特定したリスクへの対策を行うとともに定期的にモニタリング・情報開示を実施し、取り組みの改善を図っています。
人的資本
創業以来、当社を支えてきたのは「人財」です。外部環境が日々変化する中、世界が抱える様々な問題を解決していくためには、人種、国籍、性別、宗教、障がいなどにかかわらず、変化に柔軟に対応できる人財を採用・育成し、人的資本を高めていくこと が必要です。当社グループでは、人財を「資本」と捉え、人財の価値を最大限引き出し、中長期的な企業価値の向上を目指す、「人的資本経営」を推進しています。
「人的資本経営を推進し、エンゲージメントを高め働きやすい職場環境を構築する」という経営方針に則り、人事制度の改革や人材教育プログラムの推進など、経営戦略と人事戦略を連動させた取り組みを継続して行い、従業員が変化を厭わず、チャレンジでき、誰もが魅力を感じる職場を作ってまいります。
ステークホルダーとの信頼構築・強化に向けて
当社グループは、社会の一員として、各ステークホルダーとの信頼関係の構築・強化に努めています。
一例として、適時適切なディスクロージャー(情報開示)と透明性の保証、株主に対するアカウンタビリティー(説明責任)確保のため、アナリスト・機関投資家との個別面談の実施や機関投資家向けの決算説明会の開催、情報開示の充実を図るなど、IR活動を強化しています。
おわりに
企業の持続的な成長と持続可能な社会の実現を考えていく上で、1年後、2年後といったすぐ先の未来と同時に、10年後、100年後の未来という広い視野での進化も見据えていかなければなりません。香りの世界はまだまだ未知の領域を残していますが、わたしたちには、最新の科学と、100年以上の歴史の中で受け継いできた感性があります。香料のもつ無限の可能性を追求するために、香りのトレンドの分析や新技術の開発、潜在的なニーズを先取りした提案力の強化など、モノづくりのパートナーとして、期待を超える提案を目指します。
地球環境問題の深刻化、市場の成熟化や多様化、高齢化社会、食資源不足など、世界は様々な課題を抱えています。その解決に向け、わたしたちは、香りにとどまらず、幅広い技術をもって新たな価値と感動を生み出し、より豊かな生活に貢献する会社を目指していきたいと考えています。