官能評価/生理応答計測

糖度・酸度と

飲用温度の違いによる

糖酸飲料の飲みやすさ評価

糖度・酸度を変化させた糖酸飲料について、温度を変えて飲んだ時の官能評価と唾液腺活動計測を行いました。その結果、糖度・酸度の異なる飲料では風味の感じ方に対する温度の影響が異なること、また温度の違いによる風味の感じ方の違いが唾液腺活動に影響を与えることを示唆する研究結果を得ました。

糖酸飲料の嗜好性や風味は、糖度や酸度に依存して大きく変化しますが、飲用時の温度にも影響を受けます。これまで、糖酸バランスを変えることでスポーツドリンクタイプとニアウォータータイプを作製し、温度の違いによる風味の感じ方を検討しました。更に、詳細な糖度・酸度と温度の違いによる飲みやすさの関係を調べるために、スポーツドリンクタイプとニアウォータータイプの中間タイプ、ニアウォータータイプよりも低い糖度・酸度タイプについて、温度の違いによる風味の感じ方や唾液腺活動への影響を調べました。本研究結果は、飲用温度に合わせたフレーバーの評価の有用な手段となり得ると考えられます。

この研究成果は2017年9月25日~27日に開催された日本味と匂学会第51回大会(会場:神戸国際会議場/兵庫)でポスター発表を行いました。本研究は、東京大学と共同で行いました。

糖度・酸度と温度の違いによる嗜好性や飲みやすさの変化を調べるために、様々な糖度・酸度(①ニアウォータータイプよりも低い糖度・酸度タイプ、②ニアウォータータイプ、③スポーツドリンクタイプとニアウォータータイプの中間タイプ、④スポーツドリンクタイプ)のみかんフレーバー添加糖酸飲料の官能評価を行い、常温品を飲んだ場合と冷蔵品を飲んだ場合を比較しました。糖度、酸度の異なる飲料では飲みやすさや嗜好性に対する温度の影響が異なり、常温では高糖度・高酸度になると嗜好性は低下しますが、低温で飲むことにより抑えられることが分かりました。更に各試料に対する唾液腺血流応答は、高糖度・高酸度では「嗜好性が保たれる低温」で飲む方が「嗜好性が低下する常温」と比較して有意に大きいことが観察され、ニアウォータータイプでは、常温と低温で嗜好性に差はなく、唾液腺応答にも差は見られませんでした。糖度・酸度の異なる飲料では風味の感じ方(飲みやすさ)に対する温度の影響が異なること、また温度の違いによる風味の感じ方の違いが唾液腺活動に大きく影響することが示唆されました。

図1. 糖度, 酸度を変化させたみかんフレーバー添加糖酸飲料の常温品と冷蔵品に対する官能評価結果(平均値±標準誤差, 22名, **, p< 0.01; *, p < 0.05; +, p<0.1, t-test vs. 常温品)
図2. 糖度, 酸度を変化させたみかんフレーバー添加糖酸飲料の温度違いに関する唾液腺活動計測結果(平均値±標準誤差, *, p < 0.05, t-test vs. 常温品に対する唾液腺血流応答比)
【発表学会】 日本味と匂学会第51回大会(兵庫)2017年
【発表タイトル】 「温度」と「糖度・酸度」の違いによる糖酸飲料の飲みやすさ評価
【発表者】 松本知奈1、黒木康太1、中村明朗1、前田知子1、中村哲也1、斉藤司1、森憲作1,2
1長谷川香料株式会社総合研究所 2東京大学
【参考文献】 「温度」と「糖度・酸度」の違いによる糖酸飲料の飲みやすさ評価. 日本味と匂学会誌, 第51回大会Proceeding集 S131-S132