フレーバーフレグランス官能評価/生理応答計測AVV®(香りの見える化)

睡眠時における香り介入が睡眠時の呼吸に影響を与える

 睡眠は、健康増進・維持に不可欠な休養活動であり、質・量ともに十分な睡眠を確保することにより、心身の健康を保持し、生活の質を高めることができます。睡眠の質の向上には、睡眠環境や生活習慣、カフェインなどの影響を考えることが重要ですが、睡眠時無呼吸症候群のように病気が原因で睡眠の質が悪くなることもあります。

 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に喉や気道の筋肉が緩み、空気の通り道が一時的に塞がれることで、呼吸が止まったり弱くなったりする病気です。これが原因で何度も目が覚めてしまい(覚醒状態)、睡眠の質が悪くなることが知られています。このような症状は、睡眠時無呼吸症候群の診断まで至らない人においても見られ、睡眠の質の低下に影響している可能性があります。

 そこで私たちは、寝ているときに香りが呼吸に対してどのように影響するかを調べるため、株式会社ナインアワーズの睡眠解析サービスを活用し、一般生活者を対象に大規模な睡眠データの取得・解析を行いました。香りはラベンダー、ゼラニウム、レモングラスの3種類を用い、香りのない条件と合わせて、チェックイン時に実験参加の同意を得た全2387件のデータを解析対象としました(各条件、n=500-700程度)。その結果、香りのない条件に比べ、全ての香り条件で、睡眠1時間あたりの無呼吸※の回数が低下し、AHI(無呼吸低呼吸指数、Apnea-hypopnea index)の数値も、ラベンダー条件、ゼラニウム条件の両条件で低下しました。また、ゼラニウム条件とレモングラス条件では1時間あたりの中途覚醒回数が低下しました。以上のことから、 睡眠中の呼吸状態に影響を与える可能性が示唆されました。

 今後も、睡眠に対する香りの効果について研究を重ね、得られた知見をフレーバー・フレグランス開発に応用していくことで、睡眠に悩む多くの生活者にとって満足度の高い製品づくりを目指します。 

 ※ 10秒以上呼吸がとまっている状態を無呼吸としました

   

株式会社ナインアワーズHP:https://ninehours.co.jp/

注)睡眠指標の数値は株式会社ナインアワーズより提供された参考値であり医療機器による数値ではありません


【学会発表】

この研究成果は2025年6月28日~6月29日に開催された日本睡眠学会第49回定期学術集会

(会場:広島大学霞キャンパス/広島県)でポスター発表を行いました。