シソ

シソは、シソ科シソ属に分類される一年草で、原産地はヒマラヤ・中国・ミャンマー地方一帯だとされています。天ぷら、刺身、吸い物、梅干しなどの代表的な日本食にも広く使われており、我々日本人にとって最も馴染み深い食品の一つでしょう。日本に渡来した時期については様々な説がありますが、各地で縄文時代の遺跡からシソ種実の出土例があり、新潟県下では約2、500年も前の土器とともにシソの実が出土しています。
 シソはビタミン類、ミネラル類を多く含み、香り成分との相乗効果で、古くから薬用としても広く用いられてきました。奈良時代の文献にも、朝廷の内膳所でシソを栽培し、実を薬用として献上したという記録が残っています。
 シソの独特の香り成分は、ペリラアルデヒドやリモネン、カリオフィレンなどです。なかでも成分の半分以上を占めるペリラアルデヒドはシソアルデヒドとも呼ばれ、強い抗菌作用・防腐効果があります。シソが刺身のつまや、薬味に欠かせないのはこのためです。シソの名前の由来として、「中国の三国時代に蟹を食べてひどい食中毒にかかった少年がいた。肌の色は紫色に変色し、死に直面していたが、旅の名医が青ジソの葉を煎じて飲ませたところ命が蘇った。そこでこの葉は『紫蘇』と名付けられた」という話もあります。この他にもシソには消化酵素の分泌の促進、食欲増進、解熱、鎮咳など様々な効果があります。
 シソは、赤いアントシアン系色素(シソニン)の有無によって、赤ジソ系と青ジソ系に分けられますが、カロチンが赤ジソに少ないほかは、青ジソと赤ジソの成分はあまり変わりません。一般的に香りが良く栄養価も高いのは青ジソ、薬効が高いのは赤ジソだと言われています。
(update:2003.07.10)

オレガノ

オレガノは地中海沿岸を原産とするシソ科の多年草で、ヨーロッパでは紀元前から使用が確認されている大変歴史の長いハーブです。名前はギリシャ語で「山の喜び」を意味するオリガナムに由来し、幸せを呼ぶ香草として、古代ギリシャではその葉を結婚式の花冠に編みこむ風習があったと言われています。また、古代エジプトでは高貴な人のミイラを作成する際、シナモンやクミンなど他のスパイスと共に腐敗を防ぐ目的でも利用されていました。日本へは江戸時代に渡来し、「花薄荷」の和名が付けられています。
 葉を乾燥させて使用することが一般的で、シソ科のハーブの中でも非常に香りが強いことで知られています。ほろ苦さのあるさわやかな芳香が特徴で、その主成分はチモール、カルバクロールです。
 トマトやチーズとの相性がよく、イタリア料理やメキシコ料理に利用されています。特にピザには欠かせず、「ピザ・ハーブ」という呼び名もあります。
(update:2009.09.28)

ディル

ディルはセリ科の一年草で、原産地は南ヨーロッパ、西アジアです。耐寒性の丈夫な植物であるため、現在ではインド、アメリカ、ヨーロッパ、エジプトなど世界各国で栽培されています。名前は古代スカンジナビア語で「鎮める」という意味を持つ「dilla」に由来していると言われ、古くから消化、鎮静作用が知られています。日本へは「いのんど」という呼称で江戸時代中期に渡来しました。
 植物全体に芳香を有する点が特徴で、葉はハーブとして、種子を乾燥させたものがスパイスとして利用されています。葉と種子では香りに違いが見られ、葉には爽やかな芳香があり、その主成分はα-フェランドレンです。一方、種子には刺激的な香りと辛味があり、香気成分としてカルボン、リモネンなどが含まれています。
 日本ではなじみの薄いスパイスですが、欧米、東南アジア、中近東ではピクルスの香りづけや肉料理などに幅広く用いられています。また、葉は別名「魚のハーブ」と呼ばれるほど魚料理との相性が良く、魚の臭みを消す効果もあります。
(update:2008.04.28)

サンショウ

日本を代表する香辛料植物の一つであるサンショウはミカン科サンショウ属の落葉低木です。東アジア、日本を原産として現在では朝鮮、中国にも分布自生しており、明治時代以降は人家でも栽培されるようになりました。食べると辛くて顔をしかめるという意味に由来して古名は「ハジカミ」と呼ばれ、『魏志倭人伝』や『古事記』にもその名前が記されています。
 香気成分としてリモネン、シトロネラールなどが含まれ、サンショウ特有のさわやかな芳香を形成しています。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」ということわざがありますが、この特徴的な辛味の主成分はサンショオールで局所麻痺の作用があり、サンショウを食べると舌がしびれるのはこの成分によるものです。
 日本では主に若葉、未熟果、完熟果の乾燥果皮が香辛料として佃煮、酢の物、蒲焼きなど多くの料理に使用されている他、七味唐辛子にも含まれています。また、中国では「花椒」と呼ばれ、麻婆豆腐をはじめとする四川料理の風味を出すために欠かせません。
(update:2008.01.11)

サフラン

旧約聖書の中で「芳香を放つハーブ」と記されているサフランは地中海沿岸、小アジアを原産とするアヤメ科の多年草で、春に咲くクロッカスと同種の植物です。めしべに強い芳香があり、これを乾燥させたものがスパイスとして利用されています。1本の花からごくわずかな量しか採れないため非常に高価で、スペイン、フランス、トルコなどで栽培されています。
 サフランの歴史は大変古く、ヨーロッパでは紀元前から染料としても使われており、古代ギリシャでは王族のみに許されたロイヤルカラーの原料でした。また、インドでも高僧の衣を鮮やかな黄色に染めるのに大変重宝されていました。
 香りの主成分はサフラナールで、その他にピネン、シネオールなどが含まれ、独特の甘くスパイシーな香りを形成しています。また、特有の黄色い色素の主成分はクロシンで、油には溶けません。
 色付け、香り付けの両面からスペインのパエリアやフランスのブイヤベースなど多くの料理に利用されている他、バターやチーズにも使われることがあります。また、鎮静、鎮痛、発汗作用もあり、生薬名で「番紅花」と呼ばれています。
(update:2007.08.31)

スターアニス

スターアニスは中国西南部原産のシキミ科の常緑高木です。その果実は香辛料として用いられ、八角(はっかく)、八角茴香(はっかくういきょう)、大茴香(だいういきょう)とも呼ばれています。これらの名称は実の形が八つの角を持つ星形をしていること、香りがアニスシードやフェンネル(茴香)に似ていることに由来しています。
 中華料理には欠かせない香辛料で、特に肉料理の香りづけや臭み消しに広く用いられています。また、中国特有の混合スパイスである「五香粉(ウーシャンフェン)」は、スターアニス、フェンネル、クローブ(丁子)、チャイニーズペッパー(花椒)、カシア(肉桂)、陳皮のうちの五種類を混合したものです。
 なお、東洋では古くから宗教的に香料として用いられ、線香の香料原料としても使用されてきました。日本においても、戦国時代の武士は出陣の時、兜の中にこの香を炊き込んだといわれています。
 スターアニスの香気成分は、その85〜90%をアネトールが占めており、独特の甘い芳香を形成しております。
(update:2006.04.06)

セージ

セージは地中海沿岸原産のシソ科の常緑多年草です。学名はSalvia officinalisで、ラテン語で「救う・治す」という意味のSalvusと「薬用の」という意味のofficinalisに由来すると言われています。
 ヨーロッパでは古くから薬用植物として利用されており、「庭にセージのある家から病人が出るはずがない」ということわざにもあるように、あらゆる病に効く万能薬として重宝されてきました。
 セージの香りの特徴はヨモギの香りにも似た新鮮なグリーンノートで、1、8-シネオール、カンフェン、カンファーなどの成分が寄与しています。
 セージはハムやソーセージなどの蓄肉加工品にもよく使われますが、それは優れた防腐作用に加え、さまざまな肉や魚の臭みをマスキングする効果があるためです。中でも豚肉との相性は抜群で、「ソーセージ」の語源が豚肉を意味する「ソー」とセージを組み合わせたものだという説もあります。
(update:2005.5.2)

シナモン

ジンジャークッキーやクリスマスプディング、シュトーレン(ドライフルーツやナッツをふんだんに練り込み、全体に粉砂糖をふりかけたドイツのケーキ)などの伝統的なクリスマス菓子に欠かせないスパイス、シナモンは、インド南西部及びスリランカ原産のクスノキ科クスノキ属の常緑樹木の樹皮を発酵させ、余分な部分を削り取ったものです。 
 他の素材の甘みをひきたてる効果のある少しスパイシーな優しい香りが、クッキーやプディング、パイなどの菓子はもちろん、リンゴやカボチャ、サツマイモなどを使った料理とも大変良く合います。中でもリンゴとの相性は抜群で、アメリカではアップルパイだけでなくアップルジャムにもよくシナモンを使うそうです。
 シナモンの香りに含まれているのはシンナムアルデヒド、シンナミルアセテート、オイゲノールなどの香気成分です。これらの成分には解熱、鎮痛、発汗、消化液分泌促進などの効果があると言われています。
 また、シナモンには大変強い抗菌・防腐作用があり、古代エジプトではミイラを保存するときの薬剤の一つとしても使われていたそうです。保存性が求められるクリスマス菓子には最適なスパイスなのです。
(update:2004.12.14)

ウコン(ターメリック)

ウコンはショウガ属ウコン科の多年草です。「春ウコン」や「紫ウコン」など世界中に約50種以上があると言われていますが、我々にとって一番馴染みが深いのは、カレー粉やたくあん、からしなどの色づけにも使われている「秋ウコン」でしょう。秋に白い花を咲かせ、根茎部の断面がオレンジ色をしているのが特徴です。この根茎部を乾燥するなどして香辛料や天然色素として使います。
 ウコンの産地は原産地のインドをはじめとするアジアの熱帯・亜熱帯地域で、日本では主に沖縄で栽培されています。古くから暑い夏を乗り切るための妙薬として珍重され、琉球王朝時代には王家秘蔵の高貴薬として厳しい専売制度のもとに栽培されていたこともあるそうです。
 明治時代に入り西洋医学が主流になるにつれてその存在が薄れてしまったウコンですが、最近では黄色の色素成分であるクルクミンや香りの成分に肝機能障害を予防・改善する作用があるとして再び注目を浴びています。
 ウコンの香りには、合わせて全体の約70%を占めるα-、ar-、β-の三つの異性体のターメロンをはじめ、カンファー、1、8-シネオール、α-クルクメンなどの香気成分が含まれています。これらの成分には他にも殺菌作用、抗腫瘍作用、健胃作用、抗炎症作用などの働きがあると言われています。
(update:2004.10.25)

クミン

クミンは地中海沿岸原産のセリ科クミン属の一年草です。料理に使われるのは実の部分です。そのままで、またはすりつぶしてパウダー状にして使います。カレーには必ずと言っていいほど使われる重要なスパイスで、これだけでも食欲を誘うようなカレー特有のスパイシーな芳香が感じられるのが特徴です。カレー以外にもシチュー、パン、チーズ、ソーセージ、サラダドレッシングなど様々な料理に幅広く使われるため「最もポピュラーなスパイス」とも呼ばれています。
 中世のヨーロッパでは結婚式の時に花嫁と花婿それぞれのポケットにクミンを忍ばせる風習がありました。これには「神秘的な香りを持つクミンを上手に使って料理の出来る花嫁は夫を確実に身近に引きとめる腕前を持っている」、「花婿も浮気をせず、また十分な量のクミンと料理の材料を家に持ち帰るくらい妻に忠実でなければならない」という意味があったと言われています。
 クミンの香りにはクミナール(クミンアルデヒド)をはじめ、クミンアルコール、γ-ターピネン、α-ピネンなどの香気成分が含まれており、消化促進、解毒作用、食欲増進などの効果があると言われています。中国でもクミンは「馬芹」と呼ばれ、漢方の胃薬として扱われているそうです。
(update:2004.9.24)

バジル

パスタやピザなどのイタリア料理でおなじみのバジルはシソ科の多年草または一年草です。原産地はインドを中心とした南アジアです。エジプトを経てヨーロッパに広まり、現在は世界各地で広く栽培されています。
 日本には江戸時代に薬草として中国から伝えられました。水に浸してまわりがゼリー状になった種を、目に入ったゴミを取り除く目薬のようなものとして利用していたようです。和名の「メボウキ(目箒)」も「目の掃除をする箒(ホウキ)」という意味で付けられました。
 バジルの香りは少し甘みのあるすっきりとしたグリーンノートが特徴です。この香りには調理したトマトやコリアンダーシードにも含まれるリナロール、樟脳の香りのカンファー、シナモンやクローブ(丁子)にも含まれるスパイシーな香りのオイゲノール、フェンネルやタラゴンにも含まれる甘い香りのエストラゴール(メチルチャビコール)などの香気成分が含まれています。
 バジルはトマトと大変相性が良いことで有名ですが、相性が良いのは味や香りだけではありません。一緒に植えると互いに害虫を防ぎながら良く育ち、それぞれの味がさらに美味しくなると言われています。このように一緒に植えると相性の良い植物同士のことをコンパニオンプランツ(共栄植物)と呼ぶそうです。
(update:2004.8.18)

タイム

タイムはシソ科の多年性常緑小低木です。地中海沿岸が原産ですが、環境に対応する適応性が強いため、亜熱帯から温帯までの気候であればどこでも生育が可能です。現在世界に100種以上の種類があると言われています。
 ヨーロッパでは古くから愛されてきたハーブで、古代ギリシャ時代にはすでに調理用や薬用にと幅広く使われていました。その気品あるすがすがしい香りから「勇気」や「行動力」、「気品」などのシンボルとされ、「あなたはタイムの香りがする」といえば男性にも女性にも最高のほめ言葉だったそうです。また、タイムの香りには気分を高める効果があると考えられていたため、中世の貴婦人たちは戦いに出る騎士にタイムの小枝を刺繍したハンカチを贈ったと言います。
 香りは種、産地、気候などによっても違いますが、最も一般的なタイプにはチモールとカルバクロールが主要な香気成分として含まれています。これらの成分には大変強い防腐作用があり、タイムがピクルスやソーセージなどの保存食にもよく使われるのはそのためです。
 また、タイムの香りは熱を加えても変化しないため、西洋料理では肉や魚のブイヨン(煮汁)を作るときに使うブーケガルニ(香草の束)には欠かせない材料の一つで、ローレル、ペッパーとともに「煮込み用三大ハーブ」と呼ばれています。
(update:2004.7.27)

ローズマリー

フランス料理やイタリア料理で肉や魚の臭み消しや香り付けなどによく使われるローズマリーはシソ科マンネンロウ属の常緑低木です。左右対称に付いた細かい深緑の葉が特徴で、年に数回は薄紫や淡いブルーの小さくて可憐な花をたくさん咲かせます。
 原産地はスペイン、クロアチア南部、チュニジア、モロッコ、南仏プロヴァンス地方など地中海沿岸の地域です。その昔、長い航海を終えた水夫たちはみなローズマリーの香りで地中海に戻ったことを知ったと言われています。
 ローズマリーという名前の語源はRosmarinus(ロスマリヌス)です。これはラテン語で「海のしずく」を意味する造語で、海に面した崖に咲く花の姿がしずくのようだったことに由来します。
 強い香りが長く持続し、また、光沢のある深緑の葉を一年中付けることから、ヨーロッパでは昔から「貞節」や「永遠の愛」の象徴とされてきました。結婚式の朝、ブライドメイトがシルクのリボンで束ねたローズマリーを「変わらぬ愛のしるし」として花婿に届ける習慣のほか、式で花婿と花嫁がローズマリーで作った冠をかぶるなど様々な習慣があるようです。一方、「記憶」や「思い出」の象徴でもあるため、亡くなった人との思い出を永遠に忘れないことの証として墓前に捧げられることも多いそうです。
 ローズマリーの少し刺激的で清涼感あふれる香りには森林の香りにも含まれるα‐ピネンやβ‐ ピネン、墨の香りに用いられるボルネオール、樟脳のような香りのカンファー、ユーカリオイルの主成分1、8-シネオール、ラベンダーやコリアンダーシードの主成分リナロールなどが含まれています。
(update:2004.6.24)

カモミール

カモミールは4月から初夏にかけてマーガレットを小さくしたような白い花をたくさん咲かせる北ヨーロッパ原産のキク科の植物です。「カモミール」という名前の語源はギリシャ語で「大地のリンゴ」という意味の「カマイ・メロン」で、花の甘くフルーティーな香りがリンゴに似ていることからこう名付けられました。日本では「カミツレ」と呼ばれることもありますが、これはカモミールが江戸時代にオランダから伝わったとき、オランダ語の「Kamille(カミッレ)」を誤って「カミツレ」と表記したことがきっかけだったと言われています。
 古代エジプト時代は、カモミールは治癒の秘薬として崇められ、太陽神への捧げ物としても使われていました。あのクレオパトラも安眠の薬として愛用していたと言われています。
 その優れた薬効が認められ、カモミールは現在も世界中で栽培されています。最も代表的なのはフランス、ベルギー、イギリスなどで栽培されている「ローマンカモミール」とドイツやハンガリーで栽培されている「ジャーマンカモミール」の二つです。薬効はほとんど変わりませんが、香りの強さや味の違いなどから「ローマンカモミール」はエッセンシャルオイル、入浴剤、ポプリなどに、「ジャーマンカモミール」はハーブティーに利用されています。カモミールティーには安眠を促す効果があるため別名「グッドナイトティー」とも呼ばれています。
 ローマンカモミールの香りにはアンゲリカ酸エステルをはじめとするエステル類が多く含まれており、ジャーマンカモミールの香りには1、8-シネオールやアルテミシアケトンなどが含まれています。
(update:2004.5.7)

ワサビ

ワサビはアブラナ科の多年生草本です。その学名Wasabia Japonica Matsum.(ワサビア・ジャポニカ)が示すとおり、日本原産の植物です。全国各地の冷涼な渓谷の、絶えず清水が湧き、流れるような場所に自生しています。
 ワサビが栽培されるようになったのは今から約400年前の1600年頃のことです。静岡県の有東木(うとうぎ)で、ある村人が野生のワサビを採って清水の湧き出るところに植えてみたのが始まりだと言われています。1607年(慶長12年)、この有東木で栽培されていたワサビは駿府城に隠居していた徳川家康にも献上されました。家康はその珍味を天下の逸品として賞賛し、さらに葉の形が葵の紋に似ていることを大変気に入り、ワサビを有東木から門外不出のご法度品としたそうです。しかし、1744年に伊豆天城山の住人である板垣勘四郎が有東木にシイタケの栽培を教えに行った時、村の庄屋がお礼にワサビの苗を弁当箱にこっそり忍ばせて渡したことがきっかけで、全国に普及していくことになりました。
ワサビ特有の鼻にツーンと抜けるような辛味の主成分は「アリルからし油」とも呼ばれるアリルイソチオシアネートです。この辛味成分はワサビをすりおろさないと出てきません。ワサビをすりおろした時、根や葉の細胞に含まれるカラシ油配糖体のシニグリンという物質がミロシナーゼという酵素の働きで加水分解されることで生成するからです。このアリルイソチオシアネートには優れた抗菌性があり、食中毒の予防に大変効果的です。
(update:2003.7.30)

ジンジャー(ショウガ)


ジンジャーは、ショウガ科に属する多年生草本で、原産地は熱帯アジアといわれ、日本には約2600年ほど前に渡来しました。
 茎の高さ約60〜100cm、葉は被針形、無毛で、先端は鋭く、花は淡黄色で紫色の斑点があります。根茎は指を曲げてやや開き気味に握ったような形態で、香気・辛味ともに非常に強く、色は淡黄色で節を持ちます。日本における品種としては、この他に根茎の大きなオオショウガや、鱗片がほんのりと紅色をしたベニショウガなどがあります。
 現在では中国、インド、西インド諸島(特にジャマイカ)、アフリカ東海岸、メキシコ、南米の各地、特に最近ではクイーンズランド、オーストラリアなどで栽培されています。産地によりその風味は微妙に異なり、インド産やオーストラリア産は強烈なレモン様香気、日本や中国産は穏やかな芳香性でレモン様、ジャマイカ産は繊細な芳香性とスパイシー、アフリカ産は強烈な土臭さと荒々しさ、ナイジェリア産は芳香性とショウノウ的香気があります。
 香辛料原料としてのジンジャーは加工食品に広く利用され、用途により二つの時期に収穫されます。一つはまだ葉が青々とし、根茎が若くやわらかいときで、茎部をそのまま薬味として使ったり、砂糖漬けなどにします。もう一つは、茎葉が枯れたのち、根茎を掘り起こし洗浄して熱湯に漬け、日にあてて乾燥させ、医薬用のほか商業ベースで取り扱います。
 香料原料として、オイル、オレオレジン、エキストラクトのほかいろいろな形態があり、飲料や畜肉製品、菓子類に用いられています。
 乾燥ショウガの粉末を砂糖液に漬けて室温で数日間抽出し、固形分をろ過し除去すると、黄褐色をした透明なジンジャーエキストラクトができます。家庭でも簡単に製造できる方法で、好みの濃度に夏場なら氷水で、冬場なら熱湯で希釈して飲料を作ることができます。
 揮発性成分について報告されているものは200以上にのぼり、主にテルペノイドがその多くを占めています。最近のAEDAによる検索により重要成分としてリナロール、ゲラニオール、ゲラニアール、ボルネオール、イソボルネオール、ネラール、 1、8-シネオールがあげられています。
(update:2002.12.25)

ジュニパーベリー

ジュニパーはヒノキ科ネズミサシ属の一種で、樹高約3mになる常緑樹です。この植物の、直径6〜9mmの松かさに似た果実をジュニパーベリーといいます。ヨーロッパ、アジア、北アメリカなどに広く野生し、形態も環境によって様々で数多くの品種があります。一般的に高所で温かい太陽のある地域が良い実を生み出すとされています。
 ジュニパーベリーオイルは、無色か淡黄色を呈し、香気成分はα−ピネン、ミルセン、リモネン等のモノテルペン類が全体の50〜70%を占め、その他にカリオフィレン等のセスキテルペン類と微量のターピネオール、ボルニルアセテート等の含酸素化合物が含まれています。テルペンの香気が強く松ヤニの芳香と苦味をもつことから、ジンの香味づけとして古くから用いられています。このオイルには薬効もあり、利尿、健胃効果に優れ、実をワインに浸したものは食欲増進に役立つといわれています。
(update:2000.7.7)