ネギ

みそ汁や薬味、鍋料理などに欠かすことのできないネギはユリ科ネギ属の多年草で、中国西部が原産とされています。日本へは奈良時代に渡来したと言われ、日本書記にも記述が残っています。古くは「き」と呼ばれ、一文字の名称にちなんで「ひともじ」と称されることもありました。
 耐寒、耐暑性があり適応性に優れているため、江戸時代中期には日本全土で栽培が始まり、その過程で各地の気候風土に合った特徴ある品種が生まれました。大きく分けると白い部分の多い根深ネギと緑葉の多い葉ネギの二種類で、根深ネギは関東を中心とした東日本で広がり、千住ネギが代表的です。一方、葉ネギは関西を中心とした西日本に普及し、九条ネギが有名です。
 栄養価が高く、(部位により含有量に差がありますが)カルシウム、鉄分などのミネラルの他、特に緑葉にはカロチンやビタミンCが多く含まれています。また、食欲増進や体を温める効果があるとも言われています。
 香りの成分にはメチルプロピルジスルフィド、ジプロピルジスルフィドなどのスルフィド類が含まれ、独特の刺激臭を形成しています。
(update:2009.03.07)

キャベツ

キャベツは地中海沿岸地方原産のアブラナ科アブラナ属の結球性葉菜であり、世界的に最も広く栽培・利用されている野菜の一つです。同属の植物には、カリフラワー、芽キャベツ、ブロッコリーがあり、共通した香気成分を有しています。日本には800年程前に観賞用として渡来し、食用として本格的に栽培されるようになったのは明治以降です。キャベツは、洋風、中華風、和風いずれの料理にも利用され、ビタミンCを多く含みます。
 日本、ヨーロッパ、アメリカなどの世界各地が産地であり、日本では、春まき、夏まき、冬まき、また冷涼地、高冷地、中間地、暖地などの作型を組み合わせることにより周年栽培が可能です。
 キャベツの香気成分については、生、調理、乾燥された状態から、これまでに約160成分が報告されています。独特の甘い香りは、イソチオシアネートという硫黄化合物の一種です。ニンニクの独特の匂いやワサビのツンとした香りも硫黄化合物が作り出していて、キャベツの香気にも硫黄化合物が重要な役割を果たしています。前駆体としてグルコシノレートがあり、ミロシナーゼによりイソチオシアネート類などの香気成分へ変換されます。
(update:2003.1.23)

ホウレンソウ

「緑黄色野菜の王様」、ホウレンソウはアカザ科ホウレンソウ属の一年生または二年生の草本です。原産地は西南アジアで、名前の由来も中国語でペルシャ(ネパールという説もあります)という意味の「菠薐(ホウレン)」です。回教徒によって東は中国、西はヨーロッパへと伝えられました。
 日本には17世紀に東洋種が中国から、19世紀にヨーロッパやアメリカから西洋種が入ってきました。東洋種は葉が薄くアクが少ないので、おひたしなどにするのに向いています。一方、西洋種は葉が厚くアクもあるため、炒めものなど高熱を加える料理に向いています。
 ちなみに最近市場に出回っているもののほとんどは両方の特性を生かした「交雑種」と呼ばれる交配種で、様々な料理に合うだけでなく、栄養面でも非常に優れていると言われています。また、生食用に改良された「サラダホウレンソウ」も大変人気があります。
 ホウレンソウの匂いには、青葉のような香りのトランス-2-ヘキセナールやシス-3-ヘキセノールの他、根っこのほろ苦い感じの2-メトキシ-3-(1-メチルプロピル)ピラジン、根っこの甘い感じのβ-イオノンなどの成分が寄与しています。
(update:2005.3.9)

ミョウガ

薬味や漬物、汁物の具として日本食に欠かせないミョウガは、ショウガ科ショウガ属の多年性草本です。野生種は日本の本州以南から沖縄の温暖地のほかインドや中国にも自生していますが、野菜として栽培されているのは日本だけです。収穫時期によって大きく二つに分類され、6月から7月に花をつけるものは夏ミョウガ、8月から10月に花をつけるものは秋ミョウガと呼ばれています。
 ミョウガの香りにはマツやスギ、ヒノキなどの森林の香りにも含まれるさわやかな芳香のα-ピネンやβ-ピネン、土の香りに似たグリーンノートを持つメトキシピラジン類などのほかにアルデヒド類、アルコール類など様々な香気成分が含まれています。 α‐ピネンには食欲増進や消化促進、解毒などの効果があるため、ミョウガは夏バテ予防にも大変効果的です。夏になるとそうめんや冷奴などのつけ合わせとしてよく食べられるのはそのためです。
 「ミョウガを食べると物忘れが激しくなる」という迷信があるようですが、これは「昔お釈迦様の弟子の中に自分の名前も忘れてしまうくらい物覚えの悪い人がいて、その人が亡くなったあとその墓からは大量のミョウガが生えてきた」という話から生まれたと言われています。
 ミョウガは橘や藤、桐などと並ぶ日本の十大家紋の一つでもあります。これは「ミョウガ」という音が「知らないうちに受ける神仏のご加護」という意味の「冥加」と同じであるところから来ています。
(update:2004.6.2)

ミツバ

吸い物、茶碗蒸し、正月の雑煮など、さまざまな料理に彩りと香りを添える和製ハーブの代表ミツバはセリ科の多年草植物です。日本原産の植物で、学名の「Cryptotaenia japonica (クリプトタエニア ヤポニカ)Hassk.」にも「日本の」という意味が含まれています。日本の他に東アジア各地の山野に広く自生していますが、食用に栽培されているのは日本と中国だけです。
 ミツバはその栽培方法から、根ミツバ、切りミツバ(白ミツバ)、糸ミツバ(青ミツバ)の三つに分類することができます。
 根ミツバは春に種をまき、冬、葉の枯れた根元に土寄せし、翌春、葉が地上に出た頃に根つきのまま収穫・出荷します。根の部分も食べられるので、ゴボウのように炒めてきんぴらにして食べると香りも良く美味です。
 切りミツバは遮光した軟化床で育て、葉が開く頃に光を入れて緑色にして株もとで切り取り出荷します。
 一方、糸ミツバは露地やハウス、水耕栽培などで密生させて成育し軟化させたもので、茎も細く不揃いですが、香りや味が大変良く、栄養も一番多く含んでいます。糸ミツバは1年中ありますが、切りミツバ、根ミツバは早春から初夏にかけてが旬です。
 ミツバは、ニンジン、セリ、セロリ、ホウレンソウ、パセリなどと同じ緑黄色野菜の仲間で、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、鉄分などの栄養分を豊富に含んでいるため、風邪や貧血予防にも効果的です。
 ミツバ特有の香りにはミルセン、β-ピネン、キュパレン、β-セリネン、α-セリネンなどの成分が含まれています。これらの成分にはストレス解消や不眠症の改善に役立つ鎮静効果の他、健胃・消化促進・食欲増進の効果があると言われています。
(update:2004.1.19)

シイタケ

シイタケはヒラタケ科マツオウジ属のキノコです。日本を代表する栽培キノコで、海外でもShiitakeやJapanese mushroomの名で良く知られています。学名は「Lentinus Edodes Sing.」といい、これは「江戸(Edo)」にちなんで命名されました。1875年にイギリスの調査隊が東京でシイタケを手に入れ、持ち帰ったことからこのような学名がつけられたそうです。
 シイタケの人工栽培が日本で初めて行われるようになったのは江戸時代前期のことです。初めはクヌギなどの原木にナタで傷をつけて椎茸の胞子が飛んでくるのを待つ、という神頼みのような栽培方法が行われていましたが、その後人工的に菌を付ける栽培方法が開発され、今のように1年中栽培できるようになりました。栽培に最も適した気温は10〜15度で、3月から5月に採れる「春子(はるこ)」と9月から11月に採れる「秋子(あきこ)」が一番旬です。
 シイタケはカサの開き方から「どんこ」と「香信(こうしん)」に大別されます。寒い時期にゆっくりと時間をかけて育ったどんこは肉厚で弾力があり、煮物などじっくり煮込む料理に向いています。中でも湿度が低い条件で出来たものは表面に白い亀裂が入っており、「茶花どんこ」や「天白どんこ」と呼ばれる最上級品です。一方、高温多湿の条件で早く育った「香信」は肉薄で、炒め物などさっと火を通す料理に向いています。「こうこ」と呼ばれる「どんこ」と「こうしん」の中間タイプもあります。
 シイタケ特有の香りにはレンチオニンという香気成分が含まれています。これは、生シイタケに含まれるレンチニン酸が乾燥、水戻しの過程で前駆体から香気成分へと酵素的に変化することによって生成されます。レンチオニンは低い温度で水戻しした方がより多く生成されるため、シイタケの香りをより楽しむためには、お湯ではなく水で戻すことがコツです。
(update:2003.12.16)

サツマイモ

サツマイモはヒルガオ科の多年生の作物で、原産地はメキシコを中心とする中央アメリカです。日本には1597年(慶長2年)にまず宮古島から入り、琉球、長崎、薩摩、そして南九州へと伝わりました。そのため九州では「琉球芋」、沖縄では「唐芋」と呼ばれています。
 関東地方で栽培されるようになったのは江戸時代です。餓死者1万2千人の被害を出した享保の大飢饉の時、サツマイモが普及していた鹿児島や長崎では一人の死者も出なかったことを知った徳川吉宗は、サツマイモを日本中に広めたいと考えました。そこへ日本橋の魚問屋の息子で儒学者・蘭学者の青木昆陽(あおきこんよう)が大岡越前守の紹介で現れ、一冊の本を献上しました。昆陽は中国ではサツマイモが非常食として栽培されているということを知り、日本でも栽培を推進しようとサツマイモの栽培方法、利用法、貯蔵法などを「蕃藷考」(ばんしょこう)という本にまとめたのです。吉宗はすぐに昆陽を「薩摩芋御用掛」に任命し、試作を命じました。
 寒い気候での栽培の難しさや「サツマイモには毒がある」と激しく反対する人々との戦いの末、享保の飢饉から3年後の1735年(享保20年)、ついに下総馬加村(今の千葉市幕張)での栽培が成功しました。昆陽は人々から「芋神さま」と呼ばれるようになり、幕張には彼を祀る神社が建立されました。
 昆陽は1769年に亡くなりましたが、彼のお墓がある目黒不動尊では今でも毎年10月28日の縁日には、彼の遺徳を偲んで甘藷祭りが行われています。
 サツマイモの香気には、バターなどの乳製品にも含まれるジアセチル、焦げた砂糖のような甘い匂いのフルフラールの他、アセチルフラン、5-メチル-2- フルアルデハイド、フェニルアセトアルデハイド、β-イオノンなどが含まれています。
(update:2003.10.16)

マツタケ(松茸)

どびん蒸し、炊き込みご飯、吸い物や炭火焼きなどでお馴染みの「秋の味覚の代表格」マツタケは他のキノコ類と同様、樹木の根に寄生する菌根菌と呼ばれる種類の菌です。アカマツの木の根に外生菌根を形成し、樹木から炭水化物などの栄養分をもらう代わりに、アカマツが土からリン酸、窒素、水などの養分を吸収するのを助けています。
 原産は日本ですが、最近は国産のものは極めて少なく、中国産や韓国産、カナダ産などの輸入物がほとんどになりました。その最も大きな理由の一つは人々のライフスタイルの変化だと言われています。かつて人々はマツの落ち葉を堆肥にしたり、枯れ枝や松かさを燃料にするために、よく山に入ってマツ林の掃除を行っていました。ところが戦後プロパンガスや化学肥料が普及し、落ち葉や枯れ枝を集める必要性がなくなると、山に人の手が入らなくなり、放置された落葉は厚く積って、土壌中に有機物が溜まるようになりました。その結果マツ林が富栄養化し、雑菌が繁殖するようになり、雑菌に弱いマツタケが生き残れない環境になってしまったのです。
 マツタケの香気成分としては60以上の成分が報告されていますが、最も大きく寄与しているのは1-オクテン-3-オール(別名マツタケオール)とメチルシンナメート(桂皮酸メチル)です。1-オクテン-3-オールはキノコ一般の他に、ビール、エビ、熱した枝豆などにも含まれています。
(update:2003.9.11)

トマト

トマトは漢字で「赤茄子」とも書くように、ナス科の植物です。原産地については様々な説がありますが、南米のアンデス高原が原産地で、そこからメキシコ、スペイン、ヨーロッパと広まったという説が一番有力だとされています。
 少し意外かもしれませんが、ヨーロッパに伝わった当初は、食用ではなく観賞用の植物として栽培されていました。色や香りの強烈さに加え、タバコなど同じナス科の植物に麻酔作用や幻覚作用を持つものが多かったことから、毒があると信じられていたためです。
18世紀頃、イタリア南部を大飢饉が襲ったとき、ある男が死ぬ覚悟でトマトに噛り付いたところ頬が落ちるほど美味しかったため、食用にも栽培されるようになったと言われています。
 日本には17世紀の初め頃にやはり観賞用として入ってきました。明治の後半にはオムライスやハンバーグなどの洋食の流行とともに食用栽培も盛んになりましたが、昭和に入るまで生で食べられることはほとんどありませんでした。
 新鮮なトマトの青い匂いには、さわやかな青葉のような香りを持つシス-3-へキセナールをはじめ、ヘキセナール、トランス-2-ヘキセナールなどのグリーンノートが含まれています。また、非常に微量ですが、土様の匂いを持つ2-イソブチルチアゾールという窒素と硫黄を含んだ化合物も含まれています。
 一方、ピューレ、ソース、ケチャップなどの加工されたトマトの香りには、煮たアスパラガスやコーン、大根、日本茶、青海苔などにも含まれるジメチルサルファイドという硫黄化合物や、リナロールが寄与しています。リナロールはトマトと大変相性の良いバジルにも含まれている芳香物質です。
(update:2003.8.21)

タマネギ(オニオン)

タマネギは中央アジアまたは西南アジア原産の、ユリ科ネギ属の二年草の植物です。高さ 50cm〜100cmに達する緑色の円筒形の茎、その下部に2〜3の緑色の葉、10cm程度の径を持つ楕円球の地下茎、白色の球状をした花、そして黒色の種子を持っています。我々が食べているのは、地下茎の周囲に生じた葉の葉鞘部分が肥厚したものです。一枚一枚はがすと魚の鱗のように見えることから、鱗茎と呼ばれています。
 タマネギの歴史は大変古く、有史以前から既に食用栽培が行われ、滋養食品として食べられていました。著名な歴史家ヘロドトスも「エジプト史」の中で、ピラミッド建設に従事する労働者たちの料理には大量のタマネギが使われていた、と書いています。その後地中海地方、ヨーロッパ、そしてアメリカ大陸へと広まり、日本には江戸時代に南蛮船によって長崎に持ち込まれました。しかし、実際に日本人の食生活に定着したのは、洋食が一般化した第二次大戦以降のことでした。
 タマネギの特徴としては、刻んだときの催涙性があげられますが、これはS-1-プロペニルシステインスルフォキサイドがアリイナーゼ(酵素)によって分解されることで生じた、チオプロパナールS-オキシドによるものです。
 タマネギは加熱することにより甘く香ばしいフレーバーを生じますが、最もその特徴が良く現れるのは、油脂と一緒にに炒めたときです。このフレーバーにはジおよびトリスルフィド類やチオール、チオフェンなどの含流化合物の他に、油脂に由来すると思われるアルデヒド、フラン化合物なども寄与しています。また、タマネギの甘さにはフラネオール、バニリンなどの成分が貢献しています。
(update:2003.6.24)

キュウリ

キュウリはウリ科の一年草で、原産地は今もなお野生のキュウリが多く存在するインド西北部、ヒマラヤ山麓地方との説が有力とされています。食用としての栽培は約3、000年以上前、西アジアを中心に始まりました。その後地中海沿岸、フランス、イギリス、中国など世界中に広まり、現在のように世界で最も広く栽培され親しまれる野菜になりました。日本には天平時代に仏教とともに中国から伝えられましたが、その独特の強い渋みや苦味から当初はあまり人気がなく、一般的に食べられるようになったのは江戸時代、大衆野菜として盛んに利用されるようになったのは品種改良が進んだ大正時代以降だと言われています。
 キュウリの香りの特徴は何と言ってもその青さでしょう。その香気の主な成分は2、6-ノナジエノールと2、6-ノナジエナールです。その他にもノナノール、ノナナールなど炭素の鎖が9個つながった化合物のアルコールやアルデヒドがキュウリの香りを形づくっています。
(update:2003.6.9)

カボチャ

野菜として一般に食用にされるカボチャは、ウリ科カボチャ属に属する、つる性の草本です。植物分類学上では3種類に分ける事ができ、またそれぞれに品種があり和名、英名さらに俗称も加わって混乱していますが、3種とも、雌雄異花で、夏に黄色の花をつけます。
 カボチャの栽培起源はきわめて古く、約2000年前と考えられています。日本への渡来はニホンカボチャが最も古く、ポルトガル船によって渡来したとされます。このとき、カンボジアから来たと勘違いされて、カボチャという名前になったようです。
 カボチャは香料の用途としては原料の使用はなく、生食せずに調理用として用いられます。欧米ではパンプキンパイをはじめとするセイボリーあるいはデザートによく使われます。そのため、カボチャ自体の香気成分の研究報告はあまりありません。
 セイヨウカボチャは、ニホンカボチャに比べ、2倍の甘さがあり、カロチンは1.4倍、ビタミンC、Eを3倍近く含み、ホクホクとした食感です。ニホンカボチャは逆に甘みが少なく、水っぽい食感をもっています。
(update:2003.2.13)

ニンジン

ニンジンはセリ科の一年生もしくは越年性草本で原産地はヨーロッパとも中央アジアともいわれていますが、現在では世界中の様々な地域で栽培されています。
 香料として使用量が多いのはニンジンの種からとれるキャロットシードオイルですが、葉茎からはキャロットハーブオイル、根からはキャロットルートオイルが得られます。
 キャロットシードオイルはパチョリ様のウッディノートとイリス様の香りを感じさせ、はじめのうちは甘くフレッシュな感じを与えますが次第に重い土のようなスパイシーな香りとなります。香粧品にはシプレー、シトラスオイルなどとまぜてウッディーノートを与えるのに用いられ、Chanel No.19などに使用されています。また、食品香料では菓子、リキュール、スープなどに使われます。
 香気成分はいずれの部分からの精油についても詳細な分析が行われていますが、キャロットシードオイルとしては、α-ピネン、リナロール、酢酸ベンジル、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジンなどの化合物が見出されています。
(update:2002.12.9)

シュンギク

シュンギクは地中海沿岸地方が原産地のキク科の植物で、日本へは室町時代に中国経由で伝えられました。日本では鍋料理などに欠かせない野菜ですが、食用にしているのは東アジアのみで、ヨーロッパでは食べずに観賞用として好まれています。
独特な菊に似た香りを持ち、4月から5月にかけて直径3〜4.5cmの黄色または先の白い可憐な花を咲かせることから「春菊」という名前がつきました。葉は陰干しして入浴剤にすると、身体が温まり、肩こりや神経痛にも良いといわれています。また、ビタミンB2、カルシウム、カロチン、鉄分、ポリフェノールも多く含みます。
シュンギクの茎葉の香気成分として、α-ピネン、カンフェン、β-ピネン、p-サイメン、β-ミルセン、β-ファルネセン、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、リナロールなどが報告されています。
(update:2002.11.13)

セロリー

セロリーはセリ科の2年草です。原産地は南ヨーロッパで、古代エジプトで既に使用され、ローマやギリシャでは食用より医薬用に栽培されていました。古代から一般によく栽培されてきたセロリーはスモーリッジという品種で、現在、香料用に栽培されているのはこの品種の一種です。野菜としてよく見かけるセロリーの方は、17世紀に主にイタリア人によって改良された品種です。
 香料は種子を水蒸気蒸留して得られるセロリーシードオイルが主で、黄色又は緑褐色の液体で、強くスパイシーなセロリー特有の香りがします。
セロリーシードオイルの主な香気成分は、リモネン、セリネン、ミルセン、α-ピネン、β-ピネン、ブチルフタライドなどで、特徴的なものはジヒドロフタライド類です。その中でも特にセダノライドがセロリシードらしさに関与しています。
 香料の用途としては、食品には、カレーやソース類、または肉類の加工食品に広く使われ、またリキュールの構成原料にもなっています。香粧品香料としてもごく少量使用されることがあり、フローラルノートやシプレーノートに使われます。
(update:2002.10.8)