フリージア

フリージアは南アフリカ原産のアヤメ科フリージア属の多年生草本です。18世紀後半に南アフリカのケープタウンで発見され、発見者の親友の名前「フレーゼ」にちなんで名づけられました。その後ヨーロッパへ伝わり、日本には19世紀後半に渡来して栽培が始まりました。花の色や葉が水仙に似ていることから浅黄水仙、甘い香りを有していることから香雪蘭、アヤメと水仙の両種に似ていることから菖蒲水仙という和名があります。
 品種改良が進み、現在では様々な花色のフリージアを季節を問わず見ることができるようになりましたが、従来からある黄色や白色の花が特に香りが良いとされています。甘くほのかな香りが特徴で、高ぶった神経を落ち着かせる働きがあると言われています。主な香りの成分はリナロールやα-ターピネオールです。重い甘い香りはβ-ヨノンによるものです。
(update:2008.8.18)

サンダルウッド

サンダルウッドは他の植物の根に寄生する半寄生の常緑高木で、原産地はインドネシアとされています。日本においても「白檀(ビャクダン)」の名で馴染み深く、「日本書紀」によると、天智天皇の時代(671年)に中国を経て伝来したとの記述があります。
 用途は幅広く、扇子等の装飾品の他、薬用、防虫剤等として古くから珍重されてきました。また、宗教との結び付きも強く、仏像、数珠、線香等の仏具に使用されるのをはじめ、ヒンズー教では粉末にしたものを炊いて儀式の際の薫香として用います。
 心材には強い香気があり、この部分から精油が採取されるのですが、成長が遅いため、精油が採れるようになるまでには少なくとも30年以上かかり、通常は60年〜80年を経たものが採取対象となるようです。
 また、サンダルウッドと言えば通常は東インドのものを指しますが、変種も多く、例えばオーストラリアサンダルウッドもサンダルウッドの名称で流通しているものの、その植物起源は東インドサンダルウッドとは異なるものです。
 甘く高貴な香りには、サンタロールが主成分として寄与していることが知られていますが、他にも多くの特有な香気成分が含まれています。

(update:2007.3.30)

サクラ

「サクラ」はバラ科サクラ亜科サクラ属サクラ亜属に属する落葉樹の総称です。北半球の温帯地域に広く分布しますが、美しい花を咲かせる品種は主に東アジアに自生しています。日本にはヤマザクラやオオシマザクラなど9種の野生種に加え、世界で最も多い300種以上の園芸品種があります。
 中国への憧れが強かった『万葉集』の時代には「花」といえばウメのことでした。しかし、遣唐使が廃止されて日本独自の文化が注目され始めるにつれサクラの人気が高まり、鎌倉時代にはすっかり逆転したのです。
 また、こんなエピソードもあります。村上天皇の時代、御所のウメが突然枯れてしまい、とある古い屋敷のウメが植え替えられることになりました。ところが、運び込まれたその木の枝には短冊が結び付けられており、女性の字で「天皇のご命令ですので差し上げます。しかし、この木に来るウグイスに自分の宿はどうなったのかと問われたらどう答えたものでしょう」という歌が書かれていたのです。天皇はウメの木を「鶯宿梅(オウシュクバイ)」と名づけ、家の女主に返し、代わりにサクラを植えることにしました。こうして「右近の橘、左近の梅」は「右近の橘、左近の桜」となったのです。やがて貴族たちも競って邸内にサクラを植えるようになり、桜観の文化が広まっていったということです。現在サクラは菊とともに「日本の国花」として親しまれています。  
 ちなみに村上天皇が女主の歌の素晴らしさに感動し後に素性を調べさせたところ、紀貫之の娘だったそうです。
 サクラの香りにはウメ、アンズ、モモなど他のサクラ属の植物にも含まれるベンズアルデヒドをはじめ、メチルアニセートなどのエステル類、そして2-フェニルエチルアルコールなどが含まれています。昨今主流のソメイヨシノの香りが弱いため、サクラにはあまり香りがないと思われていますが、オオシマザクラのように香りの強い種類もあります。
(update:2004.3.25)

チュベローズ

チュベローズはメキシコ原産のヒガンバナ科のPolyanthes tuberosa L.という植物で7月から9月頃、甘く優雅な香りのスイセンに似た白い花を咲かせる球根植物です。ヨーロッパで品種改良され、一重の香料用品種と八重咲きの観賞用品種ができました。香料用は南フランス、モロッコ、台湾、エジプト、インド等で栽培されます。和名の「月下香」の名が示す通り、月夜の晩に咲いた香りが最高といわれます。また、寒さに非常に弱く1年中暖かい南フランスでも冬越しができない為、11月に球根を掘り上げて保管し、4月に再び植え付けます。
 チュベローズの花は開花しながら徐々に香りを出し、摘み取り後も香りを出し続ける性質を持つ為、開花途中の花を夜明け頃から摘み取ります。開ききった花は抽出中に花がしおれるため、収油率が劣ります。香料は古くから用いられるアンフルラージュ法 *、または石油エーテル法で抽出します。アンフルラージュ法の方が香料の収率が約15倍も良いのですが、人手がかかりコスト高になる為、あまり行われなくなっています。石油エーテル抽出は得られたコンクリートを冷アルコール抽出し、チュベローズアブソリュートコンクリート得ますが、収率が0.02%と非常に低い為、高価なものになります。チュベローズは香りもよく、香料素材としての価値も十分にありますが、栽培や抽出も容易ではない為、生産量が減っています。
 香料成分としてはゲラニオール、ネロール、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、メチルベンゾエート、メチルアンスラニレート、ユーゲノール、ブチリックアシッド等。また、特徴的な成分としてジャスミンラクトン等の、ラクトン類が報告されています。
 *アンフルラージュ法(冷浸法)は長方形の木枠の中間にガラス板を取り付けたシャーシーを使用します。ガラス板の両面(チュベローズの場合は片面)に精製した牛・豚脂(ポマード)を塗ってから花を並べ、このシャーシーを密着させて何段も重ね、2日後に花を新しいものに取り替えます。これを繰り返して得られる香気成分が十分吸着されたポマードをアルコール抽出し、アブソリュートポマードを得ます。昔は主にジャスミンやチュベローズに使用され、特にチュベローズでは近年まで使用されていました。
(update:2002.9.2)

エニシダ(ブルーム)

エニシダは英名をブルームといい、言葉の通りその小枝で作られた箒に由来しています。フランスではジェネと呼び、グラース近郊の山々は6月から7月にかけて野生のジェネの黄金色の花でいっぱいになり、甘く強い香りが漂います。ヨーロッパ原産のマメ科に属する植物で、2.5センチぐらいの黄金色の花をつける1〜3mの低木です。通常ブルームまたジェネと呼ばれるものは、スコッチブルーム(和名エニシダ)と呼ばれ香料としての利用は少なく、スパニッシュブルーム(和名レダマ)と呼ばれるグラース近郊に多い種類から、香料を取ります。
 香料は花を溶剤抽出しその後、アルコール処理し、ブルームアブソリュートを得ます。アブソリュートは半固体状、または粘度の高い液体で、香りは甘さが強く、花粉様でコクがあり、少し干し草様の部分もある香りです。香気成分としては、リナロール、リナリルアセテート、1-オクテン-3-オール、フェニルエチルアルコール、メチルアンスラニレート、ゲラニオール等が報告されています。
(update:2002.8.9)

ユリ(リリー)

ユリは美しい姿と優れた香気により古くから人々に親しまれてきた花です。日本では正倉院の花樹孔雀文刺繍にすでに文様として使われ、また、西洋では聖なる花としてキリスト教の復活祭の儀式にも使われます。ユリはユリ科ユリ属に属し、約100種、世界に分布し、ほとんどが北半球の温帯を原産としています。6月〜7月頃にラッパ状、またはベル状の花を咲かせます。
ユリは世界的に広く知られ、強い芳香を持っていますが、香料の産業的な利用はあまりありません。南フランスでマドンナリリーから石油エーテル抽出によるアブソリュートが生産されますが、高価で生産量が極めて少ないため、通常は他の花精油や合成香料を使った、調合された「リリーベース」が使用されます。
マドンナリリーアブソリュートの香気成分としては、p-クレゾール、リナロール、α-ターピネオール、フェニルエチルアセテート、フェニルエチルシンナメート等が報告されています。
(update:2002.7.22)

クチナシ(ガーデニア)

梅雨に入り、白いクチナシの花が咲き始め、遠くからでも気付く強さのある甘い香りが香ってきます。古来から特有の強さのある香りため称賛され、よく栽培されてきました。日本・中国原産のアカネ科クチナシ属の常緑低木で、和名のクチナシは「口無し」という意味で、果実が熟しても裂けないことに由来するといわれています。八重咲き、ほふく性もあり、栽培品種としては小花のコリンクチナシ、大輪八重咲きのオオヤエクチナシ、矮性のコクチナシなどがあります。果実は古くから薬用や黄色の染料として用いられ、現在も天然着色料として重要です。
優れた香気のために花から香料を得る試みが多くなされましたが、溶剤抽出も収率が低いため、市販品が市場に出回ることはほとんどありません。香料素材としてはガーデニア香の調合品が広く使用され、重要です。
香気成分としてはベンジルアセテート、リナロール、リナリルアセテート、ターピネオール、メチルアンスラニレート。グリーンノートに関与するシス−3−ヘキセノールとそのエステル類。甘いフローラルノートのシス−ジャスミンラクトン等報告されています。
(update:2002.7.5)

スイカズラ(ハニーサックル)

日本では北海道南部から沖縄までの各地に分布し、山野の日当たりの良い所に生える蔓性の低木で、スイカズラ科に属します。花筒の奥に密が溜まり、吸うと甘いのでスイカズラと名の基になったといいます。また、蔓のからみと花は唐草模様としてデザイン化されました。ヨーロッパでは、初夏にジャスミンやオレンジフラワーの香りを混ぜたような芳香のある花を咲かせる為、垣根や建物の外側に這わせて栽植されます。
 香料は花を溶剤抽出後、アルコール処理し、黄緑色のアブソリュートを得ます。しかしアブソリュートの香りは元の花と比べると弱く劣っている為、むしろハニーサックル調の調合香料のほうが重要です。
 花の香気成分としては、リナロール、リナロールオキサイド、シス−3−ヘキセノール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、ジャスミンラクトン、シス−ジャスモン、メチルジャスモネート、インドール、ネロリドール等が報告されています。
 また、スイカズラは生薬として用いられます。花蕾を乾燥したものが金銀花と呼ばれ、解熱、解毒剤として用いられます。
(update:2002.6.24)

ヒヤシンス

ヒヤシンスはユリ科に属し、原産地は地中海に面したシリア、トルコ、ギリシャあたりと考えられています。野生種は青色の花をつけ、ブルー・ベルなどと呼ばれましたが、現在は品種改良が進み、白、ピンク、紫、黄といろいろな花色が揃っています。ヨーロッパでは草姿の良さや花色の美しさ、香りの良さにより古くから栽培され、日本には安政年間に渡来しました。
近年オランダで、秋に球根を植え付け、翌春花が咲き出した時、球根を肥大させるために摘み取る花を溶剤抽出し、ヒヤシンスの香料を得ていました。このヒヤシンス・アブソリュートは強い甘さのあるグリーンフローラル的な香りですが、高価で現在は調合香料に置き換わり、アブソリュートはあまり使われなくなっています。
香気成分としは、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、シンナミルアルコール、シンナミルアセテート、ベンズアルデヒドなどが報告されています。
(update:2002.6.7)

フジ(ウィステリア)

フジはマメ科のフジ属に分類される、つる性落葉樹です。東南アジアや北米が原産で、日本には、ノダフジ、ヤマフジがあります。庭園や公園、また庭木として盛んに植えられ、5月頃、花が最盛期になると紫色、または白色で小型の蝶形の花が房状に付き、長く垂れ下がり、むせ返るような甘い香りがします。香りは強いのですが、工業的に香料を採取することは行われていません。
香気成分として報告されているもので主なものは、1−フェニル−2、3−ブタンジオール、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、アニスアルデヒド、アネトール、3−ヒドロキシ−4−フェニル−2−ブタノンなどです。
(update:2002.5.17)

スミレ(バイオレット)

スミレ科は種類が多く、日本に約60種、世界の温帯地方に約500種ほどが知られています。古くから世界中で親しまれている花ですが、香料用として利用されたのは、ヨーロッパのニオイスミレのパルマ種とビクトリア種の2品種です。花を溶剤抽出して得るバイオレットフラワーアブソリュートは、第2次大戦以前は南フランス、イタリアなどで製産されましたが、製産コストが高く、また、バイオレット的な匂いの合成イオノン類を使用したコストの低い調合香料が作られるようになり、今日では市場から姿を消しています。
葉を溶剤抽出して得る、バイオレットリーフアブソリュートは一般にパルマ種より病虫害に強いビクトリア種の葉が使用されます。暗緑色の粘稠な液体で力強い緑葉様の香気を持ち、調合に使用するとブーケ中のスミレを想い起こさせます。香気成分としては、トランス-2、シス-6-ノナジエナール、トランス-2、 シス-6-ノナジエノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、オイゲノールなどが知られています。
(update:2002.4.15)

スズラン

ユリ科の多年草のスズラン属には、日本のスズラン、大型のアメリカスズラン、ヨーロッパ原産のドイツスズランの3種があります。ドイツスズランはスズランより全体に少し大きく、花もより美しく、芳香も強く、また栽培もしやすい。香料的立場から見ると、最も重要なのはドイツスズランで、英語でリリー・オブ・ザ・バレー、フランス語でミュゲと呼ばれるのはこの種類です。
 香気成分としてはリナロール、シトロネロール、ゲラニオール、シンナミックアルコール、フェニルプロピルアルコール、フェニルエチルアルコール、cis−3−ヘキセノールなどがありますが、スズランを特徴づける香気成分は見出されていません。
 スズランの香りはミュゲノートと呼ばれ、フレグランス製品の香りを構成する最も重要な花香の一つですが、その花精油は高価で収油率も低いため、産業上の利用はほとんど行われず、昔から香料界ではスズランの香りを合成香料の調合によって創っています。基本的には、ヒドロキシシトロネラール、リナロール、ターピネオール、シトロネロール、ロジノールをベースとし、その他にシクラメンアルデヒド、リラール、リリアール、ミュゲアルデヒドなどが用いられます。
(update:2001.7.6)

ジャスミン

ジャスミンはローズとともに最も好まれ多用されてきている香料素材です。原産はインド北部とされ、モクセイ科オウバイ属の常緑潅木で、世界各地で100種以上が栽培されています。香料用にはスペインジャスミンと呼ばれる種類が栽培され、フランス、エジプト、モロッコ、インド、中国などで香料の抽出が行われています。ジャスミンの香りは、花を石油エーテル、主にヘキサンで抽出して得られたコンクリートをエタノールで脱ワックスし、アブソリュートの形で使用されます。1キロの香料を取るためには約600万個の花が必要といわれ、大変高価ですが、フローラルノートの中心となる香りです。
香気成分として主なものは、ベンジルアセテート、ベンジルベンゾエート、リナロール、フィトール類などですが、特徴的なものはメチルジャスモネート、シスジャスモン、インドールなどです。ちなみに、中国でジャスミンティ−の香り付けに利用されているものは、茉莉花(マツリカ)という熱帯性の種類で、こちらはジャスモン類を全く含まないくちなしの花に似たグリーンフローラルな香りです。
(update:2001.6.22)

ジンチョウゲ(ダフネ)

ジンチョウゲはジンチョウゲ科の中国原産の常緑低木です。日本には、最初は根を薬用にするために室町時代に渡来しましたが、3〜4月に咲く花の芳香が好まれ、現在は庭木や公園などでよく見かけられます。日本に入ったものはほとんどが雄株であるため、結実しません。花の香りが同じジンチョウゲ科の「沈香」とフトモモ科の「丁子(クローブ)」に似ていることから「沈丁花」とよばれています。
香気成分の分析は多くの人々によって行われ、120を超える成分が報告されています。主なもの、特徴的なものでは、リナロール、シトロネロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、ネロリドール、ベンジルアセテート、シトロネリルアセテート、アセトフェノン、β―イオノン、ローズオキサイド、インドール、などが報告されています。
(update:2002.2.20)

イリス

イリスはアヤメ科アヤメ属の草本で日本ではカキツバタ、アヤメ、ハナショウブ等が知られていますがこれらは観賞用で、香料用には地中海沿岸地方原産のムラサキイリス、ニオイイリス、シボリイリスの3種が栽培されています。このうち、シボリイリスが香料原料として多く利用されており、イタリアのフローレンス地方が生産の中心地です。
 香料は根茎から採ります。3年生育した根茎を洗浄、剥皮、天日乾燥後、2〜3年間貯蔵すると、収穫直後の青臭い馬鈴薯のような香りがイリス特有の強いバイオレット様の香気に熟成されます。これを粉砕、溶剤抽出してレジノイドを得、さらにエタノール処理をすると溶解性の高いアブソリュートレジノイドイリスが得られます。また、水蒸気蒸留で、常温で固体のイリスコンクリートが得られ、これをアルカリ処理して得たものをイリスアブソリュートといい、最も高価な天然香料の1つで香気的にも蒸留品の方が好まれています。
 イリスの香気成分として最も重要なものは、イロンです。他には高級脂肪酸とそのメチルエステル類、ベンジルアルコール、リナロール、ゲラニオール、などが報告されています。イロンの合成が可能になるまではバイオレット様香気を表現する重要な香料として多用されていましたが、高価なため徐々に減少しました。高級な香水などには現在も使用されています。
(update:2001.12.11)

マリーゴールド

マリーゴールド(タジェット)はメキシコ原産のキク科の植物で、野生化したものや観賞用など多くの品種・変種があり、その中ではアフリカンマリーゴールド(Tagetes erectra L.)とフレンチマリーゴールド(Tagetes patula L.)が栽培種としてよく知られています。
香料はTagetes granduliferaやTagetes minuta L.という種類のマリーゴールドの花、葉、茎を水蒸気蒸留してオイルを得ます。オイルは濃い黄色、又はオレンジ色の液体ですが長期間空気に触れたり、日光に当てると固化するため、遮光された密閉容器に保存されます。アブソリュートは花を石油エーテルなどの溶剤で抽出してコンクリートを得、これをアルコール抽出して得られる暗緑色の粘度の高い液体です。香料は南アフリカ、エジプト・フランス、モロッコ、インド、アメリカ、ブラジルなどで生産されますが、生産量は少なく各国の生産量を合わせても年に1.5トン程度です。
多くの香料成分の中でマリーゴールドの香りを特徴づけるものはタゲトン、ジヒドロタゲトン、3-メチル-5-(2-メチルプロピル)-2-フランカルバルデハイドなどです。タジェットオイルは他の天然香料や合成香料と調合するとフルーティーなハーブ様の香気やタバコ様の香りを与えるため、タバコ香料や香粧品香料として使用されます。
(update:2001.11.29)

イランイラン

イランイランはインドネシア・モルッカ諸島原産のバンレイシ科・学名カナンガ・オドラタ・ゲニュィナという熱帯性常緑高木で、大きいものでは15〜20メートルにもなります。マレー語で「花の中の花」という意味を持つ古くから知られた重要な香料植物です。当初、栽培の中心はフィリピンでしたが、現在はマダガスカル島、コモロ島などが主産地です。開花時の花は緑色で、厚く毛に覆われていますが、 15〜20日で成熟し黄色になり強い芳香を放ち、香気成分の含有量と品質が最高となります。また、1日の中では夜明け前が最も香気が高くなるため、早朝十分成熟した花を中心に摘花します。
 香料は水蒸気蒸留で得られるオイルが主で、最初に得られるエキストラと呼ばれるオイルはエステル類が多くまれエーテル類、フェノール類も比較的多いため香料的価値が最も高く、次いでファースト、セカンド、サードの順で留出し、エキストラとは逆にセスキテルペン類などの含有量が次第に多くなり香気が弱くなります。サードは主に石鹸用などに用いられます。他に、溶剤抽出によるアブソリュートがありますが、生産はわずかです。
 香気成分は産地やグレードによっても異なりますが、ベンジルアセテート、p-メチルアニソール、リナロール、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、などが報告されています。また、インドネシアのジャワを中心に産するカナンガは学名カナンガ・オドラタ・マクレフィラというイランイランとごく近い種類でカナンガオイルはイランイランと似た匂いですが少々きめの粗い匂いです。
(update:2001.11.12)

オレンジフラワー

オレンジフラワーアブソリュートはミカン科のビターオレンジの花から得られます。ビターオレンジの原産地は東南アジアで、近年の産地としては南フランス、アルジェリア、エジプト、イタリア、チュニジア、モロッコなどが挙げられます。ビターオレンジの木から得られる香料は花を溶剤抽出して得られるオレンジフラワーアブソリュート、水蒸気蒸留でネロリオイル、枝葉からは水蒸気蒸留でぺチグレンビガラードオイル、果皮を圧搾しビターオレンジオイルといくつもの重要なものが得られます。
 オレンジフラワーアブソリュートはローズ、ジャスミンに次ぐ重要な花精油の1つで、ダークブラウンの粘性のある液体です。非常に強いフローラルで重厚なオレンジの花様の持続性の強い香りで、オーデコロンや高級フレグランスなどに幅広く変調剤として使用されます。ネロリオイルは強いオレンジの花様の香気の無色の液体で最初にオーデコロンに使われた古典的な花精油です。アブソリュートより若干安価で、ほぼ同じ用途で使用されます。香気成分はリナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール、ネロリドール、ネロール、インドールなどで、アブソリュートにはβ−フェニルエチルアルコール、オイゲノール、シトロネリルアセテート、ジャスモンなども含まれています。
(update:2001.10.29)

キンモクセイ(オスマンサス)

秋に咲くキンモクセイ(金木犀)は春のジンチョウゲと並び、香りで季節の移り変わりを知らせる代表的な植物です。中国原産のモクセイ科モクセイ属(学名のオスマンサスはギリシャ語で「香りのある花」を意味する)の常緑高木で、10月頃に橙黄色の小花を多数つけます。日本では、庭木や公園樹としてよく利用されますが、花つきの良い雄株が殆どで、実がなりません。キンモクセイは特に東洋人に好まれる香りといわれ、中国にはこの花で香りをつけた桂花茶・桂花酒などがありますが、欧米ではなじみが薄く、香料としての利用は少ないようです。
香料は中国広東省、広西省でオスマンサスアブソリュートを産しますが、高価で供給量も少ないため、高価なフレグランスなどに少量使われます。その一方で、キンモクセイの花の香りは、比較的単純な処方でその香りの特徴が出せることから、調合香料のキンモクセイの香りが、日本でキンモクセイといえばトイレの消臭剤と言われるほどに芳香剤分野で普及しました。
 花の香気成分としては、β−イオノン、リナロール、γ−デカラクトン、リナロールオキサイド、cis−3−ヘキセノールなどが主なものとして挙げられます。
(update:2001.10.15)

キズイセン(ジョンキル)

キズイセンはヒガンバナ科に属する中央ヨーロッパ原産の植物です。3個から8個の花をつけ、花の香りはナルシサスよりも繊細で華やかでありスイセンの中で最も強い香りです。フランスのグラースで栽培されますが、近年栽培量が減って数トン程度になっているため、今後はモロッコ産のものが期待されています。
香料は花を石油エーテル抽出してコンクリートを得、これからアブソリュートを得ます。ジョンキルアブソリュートはダークブラウンからオレンジ色をした粘性のある液体で、チュベローズと良く似た濃厚な香りがします。
香気成分としてはメチルベンゾエート、ベンジルベンゾエートやメチルシンナメートをはじめとするシンナミックアシッドのエステル、リナロール、メチルアンスラニレート、インドールなどが報告されています。
(update:2001.9.28)

スイセン(ナルシサス)

スイセンはヒガンバナ科の球根植物で、およそ20種ほど存在しますが、香料上重要なものはクチベニスイセン、フサザキスイセン、キズイセンの3種です。このうち、ナルシサスと言われるものはクチベニスイセンとフサザキスイセンで、現在は中東原産とされるクチベニスイセンから香料を抽出しています。花を石油エーテルで処理してコンクリートを得てこれからアブソリュートを得ます。ナルシサスアブソリュートはダークグリーンな粘性のある液体です。採花の際に葉や茎の部分も入るため、香気は強いバイオレットリーフ様のグリンノートでやや土臭さがあり、カーネーションやヒアシンスを思い起こさせる強いグリーンな香りがあります。
香気成分としては、シンナミックアルデヒド、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、オイゲノール、などが報告されています。ナルシサスアブソリュートはジャスミンの花などの香りとよく調和するため、フローラルな香りに重厚な印象を与える素材として、香粧品香料に用いられます。
(update:2001.9.17)

カーネーション

英名でカーネーション、仏名はウイエと呼ばれる強い芳香を持つ多年生の植物で、ナデシコ科に属します。古くから栽培され親しまれている花で、幸福のシンボルとして母の日や復活祭などの行事に欠かせない花です。原産地は地中海沿岸と考えられ、現在はヨーロッパ諸国を中心に日本、アメリカなどほとんど全世界にわたって栽培されています。日本では観賞用の花卉としてはキクに次ぐ生産額を示しますが、精油の採取や香気成分の研究などはほとんど行われてきませんでした。
カーネーションはバラなどのように観賞用と香料採取用に品種が分かれず、同じものが使われます。春から夏にかけて開花し、6月下旬まで切花用。生花シーズン末期の7〜8月にかけて香料採取用に利用されます。近年、エジプトやケニアでも栽培されるようになりました。カ―ネーション香料は石油エーテルで抽出したコンクリートからアブソリュートを得る方法がとられますが、収油率0.03%と低く高価なため生産量が減少しています。
カーネーションの花は濃厚でスパイシ−なクローブ様の香りがします。香気成分としては、オイゲノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルベンゾエート、ベンジルサリシレート、シンナミルアルコール、シトロネロールなどがみいだされています。
(update:2001.8.31)

ミモザ

ミモザは和名でフサアカシアと呼ばれるオーストラリア、およびタスマニア原産のマメ科の常緑高木です。花は2〜3月頃、20〜30個の球形の濃い黄色の花が房状に咲き、甘く少し粉っぽい優しい香りがします。南フランスのカンヌ近郊のタヌロン、テウール、ペゴマス地方は栽培地で、2月の開花期になると全山黄色のカーペットで包んだようになります。現在香料用として栽培されるのは3種で、他にモロッコなどでも栽培をしています。
香料は花のついた小枝を石油エーテル処理し、得られたコンクリートをアルコールで再処理、アブソリュートを得ます。ミモザアブソリュートは少し青臭いフローラル〜ウッディーで濃厚な香りです。ライラックやミュゲ(スズラン)、バイオレットタイプの調合に効果的で、また、調合した合成香料の香りを調和させるブレンダーとしての効果や、保留剤としての効果も優秀です。石鹸やリップスティック、クリーム、パウダー用香料としても使われます。
 香気成分としては、アニスアルデヒドなどが報告されています。
(update:2001.8.20)

ラベンダー

ラベンダーはシソ科に属する小潅木で地中海沿岸地帯が原産地とされています。夏に紫色の花が 6〜10段の層についた花穂を群生させます。元来アルプス山麓に野生し、自生する場所により姿、形態、花色は元より精油成分もさまざまで、1930年代にはプロバンス地方で野生種から年約100トンの精油を生産した記録もありますが、労働効率や品質の均一性の問題から今では全て栽培種に変わっています。主要生産国はフランス、ブルガリア、旧ユーゴスラビアなどです。近年、ラベンダーとスパイクラベンダーの交雑種であるラバンジンが、より強健で収穫量も収油率も多いため栽培面積が拡大しています。
 香気成分は、リナリルアセテート、リナロールを柱にカンファー、キャリオフィレン、ターピネオール、γ―ターピネン、など多数の成分が報告されています。ラバンジンはリナロールが最も多く、次いでリナリルアセテート。また、カンファーの含有量が多く、ラベンダーよりシャープな香りです。ラベンダーは古くからオーデコロンに使われ、特に男性用化粧品には欠かせない存在です。
 日本では、気候が合う北海道で昭和23年頃、精油の生産が始まりました。昭和45年を境に貿易の自由化と合成香料の進歩などの影響で栽培が減り、細々と栽培を続けていた農家のラベンダー畑が昭和50年に旧国鉄のカレンダーに紹介され、それを機に広く一般に知られるようになりました。
(update:2001.8.3)

ライラック

英名をライラック、仏名をリラと呼ぶモクセイ科の植物で、古くから文学や絵画の世界にも数多く登場し、親しまれている花です。イラン原産といわれ、冷涼な乾燥地を好み、現在はヨーロッパ全土に分布するほか、米国、カナダにも生育し、日本では北海道に良く育ち、札幌では市の木に指定されています。5月末から6月始めにかけて紫色の花が咲き、甘い香りが漂います。
 ライラックの芳香は知られており、香調としてもバラ、ジャスミンについで重要な地位を占めていますが、その花精油の香気が生花の香気とかなり異なるため、ほとんど生産されていません。花の香気成分としては、主成分のライラックアルコールの他に、α−ピネン、オシメン、メチルベンジルエーテル、ヒドロキノンジメチルエーテル、cis-3-ヘキセノール、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒドなどが報告されています。
(update:2001.7.19)

バラ

バラはバラ科、バラ属に属し紀元前2000年以前からすでに栽培が始まっていたといわれています。現在15000種以上の品種が育成され、なお交雑が盛んに行われていますが、香料用として重要な品種は2つです。
1つは、フランスで古くから栽培されている、ロサ・センティフォリア。花は赤色で英名で
キャベッジローズと呼ぶように、キャベツ状に重なった花弁を持っています。南フランスではこの品種との交配種が栽培されローズ・ド・メ (5月のバラ) と呼ばれています。現在はモロッコやエジプトでも生産されています。2つ目に、一般にダマスクローズと呼ばれるトルコ原産とされるバラ。芳香がきわめて強く香油成分に富み、現在もブルガリアを中心に栽培されています。
キャベッジローズからは主に溶剤抽出でローズ・アブソリュートが得られます。橙赤色で重厚な甘く華やかな香り。主な香気成分はフェニルエチルアルコール、ゲラニオール、シトロネロールなどです。ダマスクローズからは主に水蒸気蒸留でローズ・オイルを得ます。透明な淡黄色の液体で、フレッシュでこくのある甘さがあり、軽く立つ香りです。主な香気成分はシトロネロール、ネロール、リナロール、フェニルエチルアルコールなどです。他に特徴的な成分としてローズオキサイド、ダマセノンなどがあります。
(update:2001.6.8)